段ボールで作った「熊」と「亀」。子供が工作で仕上げた力作にも見えますが、実はこれ、サムスンのTVや家電のパッケージを再利用したもの、つまり空き箱で作られたものなのです。サムスンは2020年から一部家電製品のパッケージに再生紙を採用していますが、それだけではなく製品を取り出した後のことも考えており、空き箱を廃棄せず本棚や猫の家を作ることができる「エコ・パッケージ」を展開しています。
段ボールを工作するだけでも結構大変かもしれませんが、実はパッケージには工夫がなされているのです。パッケージをよく見ると製品名や説明が書かれているだけではなく、等間隔で小さいドットが描かれています。またパッケージにはQRコードがあり、スマートフォンで読み取るとその空き箱で作れる棚やラックなどが表示されるというわけ。作りたいものを選ぶと設計図が表示され、定規を使ってドットを線でつないだ後はカッターで切断すれば完成するというわけです。製品パッケージは本来輸送時の破損防止のためのものですが、その本質に戻るだけではなく、廃棄処分せず再利用することでゴミの量を減らせるのです。
当初は一部のTVだけだったエコ・パッケージの採用も、今では対応製品は数十を超えています。なおTVと小型家電ではパッケージの大きさも違いますから、作ることのできるモノもバリエーションが異なります。どのパッケージも小型の棚は作れるようですが、大きいパッケージなら猫の家やトンネル、またスマートフォンやタブレット用のスキャンスタンドなんてものも作ることができるのです。
なおそれぞれ難易度が星4つで表示され、標準的な作業時間も表示されています。パッケージの再利用にサムスンが本気で取り組んでいる姿勢の表れと言えるでしょう。
冒頭の写真にあった熊や亀は、このエコ・パッケージのアイディアを競い合うコンテストの入賞者の作品なのです。いいアイディアは今後のサムスンの家電パッケージの展開図に採用されるでしょう。2021年は「ペットの家」チャレンジも東南アジアで行われ、1月にラスベガスで開催されたCES 2022では優秀作品がサムスンブースに展示されていました。
サムスンはスマートフォンだけではなくTVや家電でも大手のメーカーであり、地球環境を考えた製品作りを行うことは企業として当然の責任でもあるでしょう。サステナビリティ(持続可能性)を抜きに今やメーカーの活動は成り立ちません。サムスンは家電パッケージの段ボールの再利用だけではなく、「持ち手」のプラスチックや箱に巻きつける結束バンドも再生プラスチック材料を使用しています。他にも箱を組み立てるときにホチキスの使用をやめて接着剤に変えたことで箱の組みあげ時間を20%削減し、ラインの光熱費などエネルギー削減にもつなげています。
一方、スマートフォンなどモバイル製品もリサイクルを進めています。サムスンはモバイルビジネスの新しい持続可能なビジョン「Galaxyfor the Planet」を昨年発表しており、2025年までにすべての新しいモバイル製品に再生素材を使用するとしています。2月に発表されたばかりの新製品「Galaxy S22」シリーズは本体内部の一部のパーツに、海洋投棄された魚網を回収したリサイクル樹脂を20%混入させた材料を採用しました。サムスンによると毎年約64万トンの漁網が海に投棄されているとのことで、海洋生物の生態維持や環境対策としてこの材料の採用を積極的に進めていくそうです。
またパッケージには100%再生紙が使われています。すでに本体内に充電器などを同梱しなくなったことでパッケージサイズは小さくなっていますし、内部の仕切りや付属品を保護するフィルムも必要なくなりました。
スマートフォン本体以外でも一部のケースは再生プラスチック製。ケースはスマートフォンを保護するものですが、1年くらい使うと破棄されてしまうものが大半です。ならば最初から再生素材を使ったほうが環境により優しいと言えます。できればこのケースもサムスンが回収し、再生することで新たな用途に使ってほしいものです。
1年間にスマートフォンを約3億台、TVを約4,000万台販売するサムスンだけに、小さな積み重ねが大きな結果を生み出します。サムスン以外のメーカーにもこの動きが広がることが期待されます。