そもそもコーデック(CODEC)とは、音声の符号化(enCOder)と復号化(DECoder)を意味しており、この2つのプロセスが表裏一体となりデジタルオーディオ再生を行なうことに由来する。データに冗長な部分が多いリニアPCM音源は、サンプリングレートとビット深度に比例してデータサイズが大きくなるが、一定のルールに従い符合化すれば大幅にデータを圧縮できる。それを同じルールに基づいて復号化すると符合化前の状態に戻るため、データとして流通(ファイルのダウンロードやストリーミング)させやすくなるという寸法だ。
しかし、コーデックは魔法ではない。先ほど“符合化前の状態に戻る”と書いたが、それは情報を間引かない方式のコーデック(ロスレスコーデック)に限られる。代償としてデータ圧縮率は低くなるが、理論上はオリジナルのPCM音源を1bitの相違もなく保てるため(ビットパーフェクト)、FLACやALACなど音質重視の音源に重宝されている。
一方のBluetoothオーディオは、Hi-Fiオーディオでは事実上標準のプロファイル「A2DP」の仕様範囲内にデータ量を収めなければならない。本稿の趣旨から外れるため結論から述べるが、A2DPではBluetooth 2.xおよびその拡張規格EDR(Enhanced Data Rate)に沿わねばならず、電波の状況を考慮するとビットレートを1Mbps以内に収めることが現実的とされる。音楽CDのビットレートは約1.4Mbpsで、そのまま無圧縮ではBluetoothで伝送できない。圧縮してリアルタイムで伝送するには、現状では情報を間引く方式のコーデック(ロッシーコーデック)に頼る形となっている。
そこでどのコーデックを使うかということになるが、A2DPで必須の「SBC」、iPhone/iPadなどApple製品でサポートされている「AAC」、CD並みの高音質をうたう「aptX(アプトエックス)」、その高品質版に位置付けられる最大48kHz/24bit対応の「aptX HD」、そしてソニーが開発した最大96kHz/24bit対応の「LDAC」の中から選ぶことになる。他のコーデックに対応する製品もあるが、現在流通しているBluetoothオーディオ製品の大半はここに挙げた5種類のコーデックで構成されている。
HuaweiのHWA対応スマホ「P20」HWAは、最大96kHz/24bitの“ハイレゾに迫る”音質を実現するという