想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、MSXにてキングコングシリーズをリリースしてきたナショナルのMSX2パソコン「FS-4500」を取り上げます。発売は1986年。
MSXパソコンは統一規格という性質上、メーカーにとっては差別化をどこで図るのかが問われるマシンでした。それはMSX2パソコンも同じでしたが、MSX1時代に“ワーコン”をリリースしたナショナルがMSX2パソコンとして登場させたのが、同じジャンルとなる“ワープロ・パソコン”のMSX2マシンです。
シリーズとしてはFS-4500、FS-4600F、FS-4700がありますが、その中から今回はFS-4500をピックアップしました。ボディカラーはブラックとホワイトが用意され、それに合わせてキーボードの色もそれぞれ異なっています。
今回使用したのはホワイトモデルです。キーボードの色に着目すると、ホームポジションや機能キーごとにグレーとホワイトに分かれているのがわかります。またワープロ・パソコンと言うことで、取消や実行といったガイドが見えるのも特徴です。MSX2マシンとしては標準的な、RAM64KB、VRAM128KBを搭載。カートリッジスロットを2つと、24×24ドットの熱転写式プリンタを内蔵しています。ユニークなところでは、キーボードのかな配列を50音順にするかJIS規格順にするかを、背面のスイッチで選択できる部分がありました。
電源を入れると、プリンタヘッドが左右に“ガー、ガー”と動きながら画面が表示され、メニュー画面が現れます。選べるのは「1:和文ワープロ(30文字) 2:英文ワープロ(60文字) 3:住所録・名刺帳 4:BASIC」となっていて、ワープロのプログラムは「MSXワープロII」と命名されていました。
BASICを起動した後でも、“CALL JWP”と入力すればワープロモードを起動することが可能です。また、背面のスイッチを切り換えれば、内蔵ソフトの起動オンオフも設定できました。
本体右側面には、リセットボタンとジョイスティックポートが2つ、左側面には印刷濃度を調整するダイアルが用意されています。広告では「スラスラ文節変換、学習機能もついた」とあったのですが、1986年という時代背景を考えれば変換効率は今とは比べものにならないのは当たり前で、文節よりも単語ごとに変換していくのが最も早かったです。学習機能も、一度使用した漢字を優先的に変換候補にするというもので、現代のように前後の文節から推測して変換候補を表示する、などの素敵なものではありません。それでも、ワープロを起動して文字を入力してプリンタから印刷すれば、親の監視の目も緩くなるというもので(笑)、カモフラージュにはもってこいの機種だったのは間違いないでしょう。
ワープロモードでは、和文なら30文字×4行を一度に見る事ができ、さらには全体のレイアウトも常に表示されていたため、印刷時の状態が創造しやすい工夫がなされていました。また、内蔵していた住所録・名刺管理ソフトを使えば、年末には年賀状を印刷したり、夏に暑中見舞いを出すのも簡単。「はがきモードで自動的にあて名を印字します。」と広告にあるように、便利な機能も搭載していました。
広告では「ワープロ派のMSX2パソコン」「ビジュアル派のMSX2パソコン」というキャッチがうたれていました。カートリッジスロット2つのほかに熱転写式プリンタを搭載していたため、価格はお高めの108,000円となっています( ※)。同時期に似たスペックでプリンタを内蔵し、価格帯もほぼ同じという機種はなかったので、本機はプリンタを使用するか否かが購入の決め手になっていたのではないでしょうか。
ちなみに、本体のみであればYAMAHAのYIS604/128が99,800円、三菱電機のML-G10が98,000円、ビクターのHC-80が84,800円、そして日立のH3が99,800円となっていました。
本体背面は左から、キーボードかな配列切り替えスイッチ、内蔵ソフトのオンオフ切り替えスイッチ、外部プリンタ接続ポート、内部/外部プリンタ切り替えスイッチ、CMT端子、音声出力端子、映像出力端子、チャンネル切り替えスイッチ、RF出力端子、RGB出力端子と並んでいます。※(9/4 01:05更新)記事初出時、FS-4500は3.5インチFDDを1基搭載されている記載しておりましたが、こちらは誤りで、実際には非搭載となります。お詫びして訂正いたします。